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彦根仏壇は滋賀県彦根市およびその周辺で製造される金仏壇の総称です。江戸時代中期に彦根城城下町の武具職人が平和産業として転身したのがはじまりと言われ、仏壇仏具業界では初めて昭和50年に国の「伝統的工芸品」に指定されています。
彦根仏壇は、「工部七職」と呼ばれる各工程(木地、彫り、宮殿、塗り、金箔、蒔絵、飾り金具)ごとの職人の手により作られています。堅牢かつ良質な材料を使用した大型の金仏壇であり、「木目出し塗り」と呼ばれる、仏壇正面の木目をはっきり浮き出させる技法が施されている点が大きな特長です。ホゾ穴を用いた組み立て式で、仏壇の骨格をなす主要部品にネジや釘は用いられません。金箔は「重押し技法」と呼ばれる、艶を落ち着かせた重厚感のある仕上がりです。
仏壇造りの最初の工程が木地造りです。木地は家に例えれば骨組み、土台造りといった全体を造る重要な工程で仏壇の部分ごとに使用する木の種類を決め、その木材の選定から始まります。そして各部分の制作を行い一つ一つの部品を組み立てて1本の仏壇の木地が出来上がります。
宮殿とは、ご本尊様や仏様をご安置する須弥壇(しゅみだん)などの壇の上にある屋根のことをいいます。また、形は寺院の屋根の形を模した本山型など各種あります。破風(はふ)や虹梁(こうりょう)など千個以上の小さな部品一つ一つ丹念に造り組み立ててゆきます。また屋根瓦の一枚一枚も貼っていくという、きわめて細かい、根気のいる作業です。
彫刻の見せ場は仏壇上部の欄間(らんま)で一枚板を丸彫(まるぼ)り・重彫などの技法で雲と天女や鳳凰、菊と小鳥など、さまざまな図柄を用途に合わせて彫り上げます。 また雲は荒々しく、天女は滑らかにと彫り方に変化をつけて、仕上った時に個々が主張しあうのではなく全体の調和が取れてまとまっていることが大切です。
仏壇の装飾に使用される大小さまざまの金具を造ります。技法には毛彫、浮彫などのほかに出来上がった金具に更に手を加える魚子(ななこ)まきなどがあります。 地金そのものは、木材や金箔と違って無表情で冷たい印象を受けますが、その地金に錺り金具師が手を加えることで力強く、また優しく、そして豊かな表情を現していきます。1本の仏壇には数百種の金具が使用されますが、主に使用される材料は銅と真鍮(しんちゅう)で製品によって部分的に金や銀を使用する場合もあります。
彦根仏壇の大きな特徴のひとつに塗りが挙げられます。 漆は”生き物”で、塗り師がその性質性格を知りつくして作業を進めないと漆が持つ独特の光沢を最大限に発揮することは出来ません。特に仏壇前面扉の雨戸の木目出し塗りは面積が広いため全体を均一に塗り斑(むら)なく仕上げるためには高度な技術が要求されます。数十回の塗りと研ぎ、そして磨きを経た雨戸の表面は鏡のように均一で、漆特有の深みある美しさを見せています。
漆塗りを経た各種引き出しや猫戸の前面、和讃台、障子の腰板などに山水、花鳥、人物など、多彩な文様を一筆ずつ漆で描いていきます 。また蒔絵は筆で描く以外に金粉や銀粉のほか朱、黄、緑などの色粉を蒔きつけたり、青貝などを加えたりといったさまざまな技法があり、用途に合わせてそれぞれを組み合わせて仕上げています。彦根仏壇の蒔絵の特色のひとつに高蒔絵という文様を盛り上げて立体感のある蒔絵に仕上る技法がありその技によって多くの図柄が生み出されています。
彦根仏壇は内装に金箔が施されています。三寸六分角(タテ・ヨコ約11㎝)あるいは四寸二分角の金箔を一枚ずつ塗りあがった部材の上に押して貼り合わせています。金箔の薄さは1万分の1ミリで取り扱いが大変難しく繊細さが求められます。大型の彦根仏壇には千枚以上の金箔が使用されています。金箔の艶を均一に深く上品な光沢に仕上げていけるかが大切です。
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